日本が外国人労働者受け入れ拡大を目指し創設した在留資格「特定技能」の試験がベトナムのハノイでで初めて開催されました。創設からおよそ2年が経ち、創設時の興味もだいぶ薄れてきた中、さらに日本はコロナ感染が続くというマイナス要因が多い中の開催となりました。当初は最大の人材送り出し国として日本側は特定技能にはずいぶん期待していました。ベトナムでようやく運用が緒に就いたという状況です。しかし軌道に乗るにはハードルがたくさん残っていて、今後発展していくかどうかは未知数と言えます。

3月23日午前、会場は首都ハノイの第1建設短期大学です。試験ベトナムでの初試験は建設分野の「鉄筋施工」職種に関し実施されました。初試験は、人数を絞った「お試し」的な色彩が濃かったようです。受験者は24人で、うち20人は建設技能人材機構(JAC)が事前に現地で開講した教育訓練に参加している生徒で、一般公募で受験したのはわずかに4人だったようです。合格者19人に公募の受験者はいなかったとのことです。

日本政府関係者は「今回を呼び水に試験を軌道に乗せたい」と期待を込めるとニュースで話していましたが、日本のコロナ禍収束が見通せない中で、次の試験の具体的な見通しはまだ立っていないとのことです。一方で、ベトナム側が認可した特定技能の送り出し機関は既に400社以上になっています。派遣業界の期待は過熱気味だが、ある関係者は「職業技能プラス日本語能力が必要で、特定技能のハードルは高すぎる」と指摘。現状のままでは元技能実習生ら訪日経験者の受け皿にとどまり、希望者の大幅な拡大は望めないとみています。

高校を卒業して一度技能実習生として日本で働いた経験のあるベトナム人は特定技能の在留資格は魅力的な制度です。なぜなら、一度技能実習制度を利用して日本に渡航経験のあるものは帰国後に再入国して継続的な労働を行うための在留資格はなかったからです。ただ実際のところ特定技能試験はコロナ禍の中、帰国出来ずに日本での生活を継続することを余儀なくされている技能実習生や留学生が特定技能試験を受験して就職先を探す方法として受験されているのがほとんどで、新しい職種での仕事を希望するベトナム人が特定技能試験を受験して転職する市場が出来上がりつつあります。

日本の法務省出入国在留管理庁が発表した2021年6月末現在の特定技能1号在留外国人数に関する統計(速報値)によると、国籍・地域別でベトナムが1万8191人と全体の62.4%を占めて最多だったようです。ベトナムの人数を特定産業分野別に見ると、「飲食料品製造業分野」が7721人で最多。次いで「建設分野」が2132人、「農業分野」が1929人、「介護分野」が1428人、「産業機械製造業分野」が1403人などとなっています。特定技能1号在留外国人数の総数は2万9144人でした。ベトナム以外の国籍・地域別人数はフィリピン:2621人(全体の9.0%)、中国:2499人(同8.6%)、インドネシア:2338人(同8.0%)とベトナムと2位以下との差は大きく開いています。

日本政府およびベトナム政府とも技能実習制度から特定技能へ完全以降して、今まで問題だった高額な手数料や勤務先の待遇問題を解決したいと考えているのは間違いないと思います。先般、失踪率を問題にして13社の送り出し機関の送り出し停止措置を課したのは両政府とも本腰を入れてこの制度に対して向き合う姿勢をみせたのかもしれません。技能実習制度は欧米など諸外国から転職が出来なく、労働者に不利な状況の雇用形態だと評価され、懸念を表明しています。

特定技能は日本側の期待は依然として高く、企業様からの依頼として日本国内に在住する外国人で、特定技能の在留資格で採用したいとの声がおおきいです。しかし、ベトナム国内から日本での労働希望者にとってはハードルが高く、まだ数年は技能実習生がメインの採用となる状況が続くのではないかと思われます。