【2023年10月】技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の内容
図解:新制度「育成技能」の在留資格
2023年10月、ようやく有識者会議の最終報告書が出てきて来年度の法整備を経て今後の外国人雇用の在り方が見ててきました。報告書の内容を詳しくご紹介いたします。
1. 新制度及び特定技能の位置付けと関係性等
現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と育成を目的とする新たな制度を創設。
基本的に3年の育成期間で、特定技能1号の水準の人材に育成。
特定技能制度は、適正化を図った上で現行制度を存続。
『まずは技能実習制度を廃止して、新たな制度(育成技能)で3年の後、特定技能1号に移行出来るようにすることになるようです。また、今の特定技能は適正化を図るとのことですが、登録支援機関の適正化のようです。』
2. 新制度の受入れ対象分野や人材育成機能の在り方
受入れ対象分野は、特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定。※国内における就労を通じた人材育成になじまない分野は対象外。
従事できる業務の範囲は、特定技能の業務区分と同一とし、「主たる技能」を定めて育成・評価(技能検定、特定技能評価試験等)。
試験不合格となった者には再受験のための最長1年の在留継続を認める。
『現在の特定技能の分野と技能実習の職種を同じにすると書いてあります。人材育成になじまない分野というのが現行の分野にあるとは思えないので、今後使いされていくであろう分野において追加するかどうかの判断基準にするということだと思います。
また、3年の育成技能終了後に技能検定に合格が必要になったので今までは2号技能実習修了すれば同一職種であれば無試験で特定技能の資格を得られていたので継続して就労を希望する人にとってはハードルが少し上がりました。』
3. 受入れ見込数の設定等の在り方
特定技能制度の考え方と同様、新制度でも受け入れ分野ごとに受入れ見込数を設定(受入れの上限数として運用)。
受入れ見込数や対象分野は経済情勢等の変化に応じて柔軟に変更、有識者等で構成する会議体の意見を踏まえ政府が判断。
『この部分は各業界団体が設定する分野の見込数なので、企業団体でどうにか出来る部分ではないです。』
4. 新制度での転籍の在り方
「やむを得ない場合」の転籍の範囲を拡大・明確化し、手続を柔軟化。
これに加え、以下を条件に本人の意向による転籍も認める。
▶︎人材育成等の観点から、一定要件(同一企業での就労が1年超/技能検定基礎級合格、日本語能力A1相当以上のレベル(日本語能力試験N5合格など))を設け、同一分野内に限る。
▶︎転籍前企業の初期費用負担につき、不平等が生じないための措置を講じる。
監理団体・ハローワーク・技能実習機構等による転籍支援を実施。
育成終了前に帰国したものにつき、新制度による再度入国を認める。
▶︎それまでの新制度による滞在が2年までの者に限る。
▶︎前回育成時と異なる分野を選択可能。
『転籍については今までもいろいろと案が出ていましたが1年同一企業で就労したら本人の意向だけの理由でも転籍が出来ることになりました。ただ、転籍するには個人の能力も一定レベルにないと出来ないのと、受入時にかかる初期費用を転籍先の企業にも何らかの形で求めることが出来るようになるようです。育成技能は入国にかかる費用負担が企業や監理団体もあるので、転籍後の企業、監理団体にも何らかの形で費用負担を講じるようです。』
5. 監理・支援・保護の在り方
技能実習機構の監督指導・支援保護機能を強化し、特定技能外国人への相談援助業務を追加。
監理団体の許可要件厳格化
▶︎監理団体と受入れ企業の役職者の兼職に係る制限又は外部監視の強化、受入れ企業数等に応じた職員の配置、相談対応体制の強化等。
※優良監理団体については、手続き簡素化といった優遇措置。
▶︎受入れ企業につき、育成・支援体制等に係る要件を整備。
『今まで特定技能に関しては入国管理局が監理していましたが今後は特定技能者に対しても機構に監督支援保護を受け持つことになるとのこと。監理団体(組合)の理事等は参加企業の役員が兼任していることが多く、今後は独立性を求めていくことになると思います。また受入れ企業においても育成支援の要件を設けるようです。』
6. 特定技能の適正化方策
新制度から特定技能1号への移行は、以下を条件。
①技能検定3級等又は特定技能1号評価試験合格
②日本語能力A2相当以上のレベル(日本語能力試験N4合格など)
※当分の間は相当講習受講も可
登録支援期間の登録要件や支援業務委託の要件を厳格化。
『技能実習2号終了後に特定技能移行する場合は日本語の資格要件はありませんでしたが、今後新制度においてはN5相当の資格を求めるとのことです。3年間の就労中に何らかの日本語学習を継続をさせることも盛り込まれているので、今後は日本語能力が重要になってくると思われます。』
7. 国・自治体の役割
入管、機構、労基署等が連携し、不適正な受入れ・雇用を排除。
送出国と連携し、不適正な送出機関を排除。
業所管省庁と業界団体の連携による受入れ環境整備のための取組。
日本語教育機関を適正化し、日本語学習の質を向上。
自治体において、生活相談等を受ける相談窓口の整備を推進。
8. 送出機関及び送出しの在り方
二国間取決め(MOC)により送出機関の取締りを強化。
手数料等の透明化を高め、送出国間の競争を促進。
受入れ企業が一定の来日前手数料を負担するなどの仕組みを導入。
『仲介業者や送出機関に支払いをしていた技能実習の手数料ですが国によって金額が違います。手数料の透明化と競争を促進とありますが、他の国よりも高額であれば受入れされない国も出てくるので今後、個人が負担する手数料についても競争で下がる見込みと思われます。また、受入れ企業に一定の手数料を求めるとありますが給料の1ヶ月、2ヶ月分など紹介料が発生すると思われます。』
9. 日本語能力の向上方策
継続的な学習による段階的な日本語能力向上。
※就労開始前にA1相当以上のレベル(N5合格など)又は相当講習受講
特定技能1号移行時にA2相当以上のレベル(N4合格など)※当分の間は相当講習受講も可
特定技能2号移行時にB1相当のレベル(N3合格など)
日本語教育機関認定法の仕組みを活用し、教育の質の向上を図る。